【何故そこでラーメンをつくるのか】K’s Kitchen

「何故」と気になるラーメンがあった。
一人は十勝最北端という場所で。
一人は遠き名古屋のご当地グルメを。
一人は老舗のそば屋で。
三者三様のラーメンづくりを追った。

工藤篤史さん
陸別町出身。元祖さっぽろラーメン横丁のラーメン屋を経験した後、地元である陸別町にUターンし2019年にK’sキッチンをオープン。熱々の陸別ラーメンを提供しているが、実は本人は猫舌らしい。

ラーメンとの出会いは偶然

「面白いことをしたいんだよね」。そう楽しげに話すのは、「K’sキッチン」店主の工藤篤史さん。彼は異色の経歴の持ち主だ。高校を卒業後、庭師、印刷会社の営業、バーテンダーと、転々と職を渡り歩いた。ある時、ふらっと元祖さっぽろラーメン横丁に足を運んだ。そのときに入ったラーメン屋の店主に仕事を辞めたことを話すと「うちで働きなよ」と誘われ、それもまたいいかもと思いすぐに働き始めた。これが、工藤さんのラーメンとの出会いだった。横丁でのラーメンづくりは2年に及び、その後また別の職に就いていた工藤さんだったが、やはりラーメンには縁があったようだ。北海道物産展に長年出店している企業の社長から、ラーメンをつくって全国を回ろうと誘われ再びラーメンをつくることになった。全国を回る中で、その社長から「地元でラーメン屋をやったらいいんじゃない?」と勧められ、最初は「田舎ですよ」とあまり乗り気ではなかったという。20年以上帰っていなかった地元・陸別町を訪れ、現在の店の場所「ぷらっと広場」を見つけた。元々キッチンがある設備で、陸別の道の駅が近くにある。考えるより先に行動するタイプの工藤さんは、いい場所あるじゃん!と飛び込み、そこでラーメン屋をすることを決めた。

工藤さんには思い出の味があった。横丁で働いていた頃家の近所にあった「すみれ」のみそラーメンだ。生姜と山椒がきいていて濃厚な味わい。自分のラーメンには何かが足りないと、いろいろな素材で試行錯誤した。そこで、元祖さっぽろラーメン横丁で働いていたころ、面白いと思った「焙煎みそ」を思い出した。みそを焼くと、コクが生まれ味に深みが出るとのこと。工藤さんの中では、みそラーメンは「白米に合うラーメン」であることが理想だという。確かにラーメンを食べてみたら、脂っぽくないのにみその味がしっかりとしていて、白米を食べたくなった。それを伝えると満足げな顔で頷いてくれた。

「鶏白湯焙煎みそ」(700円)。麺は小林製麺の中太ちぢれ麺。濃厚なみそのスープがしっかりと絡んでモチモチとした食感。

陸別町という名前を広めたい

工藤さんには夢がある。それは陸別町の名前を海外に広めること。「日本で一番寒い町」と言われる陸別町。でもそれだけじゃない、もっと魅力があるんだ!と熱い気持ちを持っている。そのひとつとして、寒い町で食べる熱々のラーメンを「陸別ラーメン」と称して提供している。「まだまだ足りない」と首を振る工藤さん。彼の頭の中には、もう実現したくてたまらない計画があふれるようにある。次は「陸別町の牛乳を使ったソフトクリームを計画しているんだ」と教えてくれた。「やってみたい」と思ったらすぐに口に出して行動してみる。動かないと始まらないと工藤さんは言う。「やっぱり面白いことをしたいんだよね。それで陸別町をアピールできたら」。そう語る彼の目はとてもキラキラしていた。

K’sキッチン
電話番号 0156-28-0528
住所 陸別町陸別原野分線5-5 コミュニティプラザぷらっと内 
営業時間 10:00~18:00
定休日 水曜 ※12/28~1/4は休み