【推しの一杯ができるまで②】『めん吉』胃袋と心を癒やす一杯を求めて

編集部のラーメン好きが、自分の推しの一杯をご紹介。推しをこの世に生み出した、至高の職人たちに会いに行く。

第2回目、編集部Sが紹介するのは『めん吉』の塩ラーメン。

身体に負担の少ない健康的なラーメンを作りたい。そんな思いから、自家製麺と無添加スープのこだわりラーメンを作り続ける、めん吉店主蜂屋雄二さん。最近お孫さんも生まれ、ラーメン作りにさらに気合が入る蜂屋さんに、その美味しさの秘密を聞いた。

胃袋と心を癒やす一杯を求めて

まだまだ若いつもりでいるものの、身体は正直だ。実年齢は内緒にしておくが、ある年齢以降から、ラーメンを食べると胃にもたれるようになってしまった。ラーメンは好き、だから食べに行く。しかしもたれる。でも好きだから行く、またもたれる…。

そんなループを繰り返していたが、あるとき、しっかり食べてもなぜか胃にもたれない素晴らしいラーメンに出会った。しかもものすごくうまい！　それがめん吉だ。

私がいつも頼むのは「塩ラーメン」。まろやかであっさりとしたスープをまとった中太麺をつるつるっと食べるときの幸せ。このラーメンとなら、これから先の下り坂人生も共に帆走できる。

それにしてもなぜ、めん吉のラーメンは胃に優しいのか。その秘密を教えてもらうべく、プライベートでは通い慣れためん吉西帯広店を取材で訪れた。

優しい笑顔で迎えてくれたのは、帯広と音更で「自然派ラーメン　めん吉」を経営する蜂屋雄二さん。

もともとは1984年に帯広駅ステーションデパート（当時）で「ファミリー食堂」を開業。そば用に購入した製麺機でラーメン作りを始めたところ人気を呼び、1999年5月、「めん吉東店」（2003年11月閉店）を出店させたのだという。「めん吉西帯広店」をオープンしたのは2000年のこと。一時は3店舗あったが、現在は「めん吉木野店」と2店舗体制となっている。

私の胃袋の感覚通り、蜂屋さんは、「身体への負担が少ない、優しいラーメンを作りたかったんだよね」と語ってくれた。そのポリシーに違わず、麺とスープへのこだわりは実に徹底している。麺は毎日お店で手打ち。十勝産小麦「ゆめちから」と「はるゆたか」をブレンドし、アルカリイオン水でこねる。

「アルカリイオン水を使うと、消化がよくなるんです。スポーツ飲料が吸収しやすいのと一緒で、身体の中に入ったときに分解しやすくなる。あと、熟成期間が短くて済むうえに、コシが長く続くメリットもあります」とのこと。なるほど！　

スープも負けていない。やはりアルカリイオン水をベースに、本カツオ、いわし・サバ節のブレンド、昆布、豚骨、鶏ガラ、野菜を入れて8時間以上煮込む。野菜や豚肉は基本的に十勝産。味噌は十勝産大豆を使用した渋谷醸造の無添加みそ、醤油は本醸造醤油を使っている。

そして、私の本命中の本命、塩ラーメンはというと、沖縄のシママースという塩を使っているのだそう。「全国のラーメンをさまざま食べ歩いて、研究しました」と蜂屋さんは語る。

その結果、旨味や甘みのある塩を使うことがポイントだと気づき、ミネラルたっぷりの沖縄の塩シママースに白羽の矢を立てたのだと語る。ちょっと驚くのはその値段。1キロ500円ほどで、何と普通の塩の約5倍！「高いけど、やっぱりこの塩じゃないとダメなんだよね」と蜂屋さんは笑う。

これからは、塩ラーメンを食べるたびに、さらに心を込めて「ごちそうさまでした」を言おうと誓った。

ミシュランガイド北海道にも2度に渡って取り上げられ、十勝の名店として確固たる地位を築いているめん吉。蜂屋さんにそのやりがいを聞いたところ、「やっぱり、ずんどうの中のスープが空っぽになったときだね。おっ、やった！と思うんだよね」と実に嬉しそうに語ってくれた。

ではそのスープを減らす一人として、これからもずっと通い続けます、蜂屋さんへの取材を経て、改めてそんな決意を胸にした。

ラーメンは大好物だけど最近どうにももたれる…。もしそんな同士がいたら、ぜひとも一度めん吉のラーメンを食べてみてほしい。

しゅん編集部S　推しの一杯「塩ラーメン」（800円）

十勝産小麦を使った自家製麺は、アルカリイオン水で毎日手打ち。保存料、防腐剤、着色料は不使用。本ガツオ、いわし・サバ節のブレンド、昆布、沖縄の塩シママースを使ったあっさり和風系のスープは実に滋味深い味わい。
お店一番人気の「ミニ豚丼・ラーメンセット」（サラダ付／1,020円）もおすすめだ。