【老舗の暖簾をくぐる①】創業73年『来々軒』

十勝で50年以上の歴史を刻むラーメン店。地元民が通い続ける理由は、飽きの来ない味わいと店主の人柄にあった。第1回目は、創業73年と帯広市で最も古い歴史を誇る「来々軒」を訪ねた。

父の味を守り続ける、昔ながらの愛されラーメン

73年の歴史を誇る、十勝で一番古いラーメン店「来々軒」。老舗中の老舗だけに、敷居の高いお店を想像していたが、暖簾をくぐった先には、柔らかな雰囲気の女性店主吉田佳世さんと、その娘さんの人懐っこい笑顔があった。

佳世さんが子どもの頃から家にあったという年代物のおかもち。かつて出前に使用していたものと思われる。現在も大切に保管している。

来々軒が創業したのは、1949(昭和24)年のこと。

佳世さんの父である国信昇さんが、現在の栄通りで、「来々軒食堂」という屋台を始めたのが前身だ。佳世さんがお店を手伝い始めたのは南町店のとき。「23歳ころだったかな。当時は出前もやっていて、とにかく忙しかった。見かねて自主的に手伝い始めました」と語る。

昇さんが主で、佳世さんはあくまでもお手伝いだったが、お店の大黒柱だった昇さんが1996(平成8)年に亡くなってしまう。「店は大丈夫か」と、入院中もずっとお店のことを気にかけていた昇さん。それを聞いた佳世さんは、「私が守らなければ」と決心し、以来ずっと「来々軒」を支えてきた。

来々軒創業者であり佳世さんの父である国信昇さん。厨房でラーメンを作っている貴重な一枚。

小さな頃から食べ続けてきたお父さんのラーメン。そのスープの味は作り方を教わる前から舌が覚えていた。それでも、「お父さんと味が違うね、と、常連さんに言われてしまうこともあって」と当時を振り返る。

同じく「おじいちゃんのラーメン」を食べて育った娘さんは、「大丈夫、おじいちゃんと同じ味がするよ」と笑顔で太鼓判を押してくれるそう。

今日もお客さんのために。親子2代で紡ぐ満足の一杯

昔から一番人気を誇る「醤油ラーメン」は、あっさりとした何度でも食べたくなる味わい。「あっさり」の秘訣はラードを使っていないところにあるそうだ。

「こういう昔ながらの味は、もうどこに行っても食べられない」と、十勝に帰省するたびに寄ってくれる常連さんもいる。野菜、海苔、豚肉すべて道産品を使っているのもこだわりだ。

昔から今も一番人気の「醤油ラーメン」(800円)。他にも、「塩ラーメン」(800円)「味噌ラーメン」(850円)、各種チャーシュー麺(1,000円~)がある。
一杯ができあがるまでのてきぱきとした動きはさすがのもの。

お店を続けようと決意したとき、佳世さんは中学生を育てる母親でもあった。子育てとの両立は大変なこともあっただろうが、「美味しかった、ってお客さんから言われることが嬉しくて」とやりがいを語る。

屋台時代からの常連さんで、移転した今も通い続けてくれる方もいる。「親御さんが商売をやっていて忙しく、子ども時代から一人で食べにきていたそうなんです。父のこともよく覚えていて、話しを聞くのが楽しい」。

76年という歴史は、まさにお客さんと共に積み重ねてきた時間でもあるのだ。

店主の吉田佳世さん。「できるだけ身体を大切にして、創業80年、90年と続けていきたい」と語ってくれた。

来々軒の歴史

  • 1949(昭和24)年 佳世さんの父国信昇さんが、屋台「来々軒食堂」を創業
  • 1953(昭和27)年 屋台が禁止となり、大通り南9丁目鮮魚店跡にて「来々軒食堂」を始める
  • 1955(昭和30)年 「来々軒食堂」が火事で焼け、西2南8の本通りに移転
  • 1964(昭和39)年 昇さんが健康を損ねていったん閉店
  • 1974(昭和49)年 南町店にて、店名を「来々軒」として昇さん夫婦で再開
  • 1996(平成8)年 昇さんが亡くなり、娘である佳世さんが引き継ぐ
  • 1999(平成11)年 現在地に移転

来々軒
電話番号 0155-48-8953
住所 帯広市西16条南40丁目1-10 
営業時間 11:00~14:00
定休日 火曜