パティシェという生き方③――十勝トテッポ工房/今 稔郁さん

十勝で活躍する3人の菓子職人にインタビュー。
3人はなぜパティシェという道を選んだのか。そして菓子作りにかける思いとは――。

第3回は帯広市「十勝トテッポ工房」の今 稔郁(こん としふみ)さんにお話を伺った。

誰かの笑顔のために。今日よりもっとおいしいケーキを作りたい

十勝トテッポ工房では生ケーキはもちろん、焼き菓子も充実している。

十勝トテッポ工房の入り口をくぐると、ショーケースに並んだ宝石のようなケーキたちが迎えてくれる。「選ぶことも楽しみの1つなので、種類はたくさん用意しています」とシェフパティシエの今さん。この言葉を聞いたときとても嬉しくなった。ケーキは食べる時はもちろん選ぶ瞬間も至福だから。

今さんがスイーツ作りや料理に興味を持ったのは中学3年生の頃。早い時期に部活が終了し、暇な時間ができたため、母親の料理を手伝い始めたのがきっかけだった。妹や父が「おいしい」と食べてくれることに大きなやりがいを感じたそう。

それ以来、将来は料理の道に進みたい、と考えるようになった。ちょうど帯広農業高等学校に食品科学科ができたタイミングでもあり、1期生として入学。その後は帯広調理師専門学校へと進学し、十勝管内の菓子店やイタリアンレストランで基礎を学んだ。十勝トテッポ工房に入社したのは2010年の立ち上げ時のこと。「オープンから関わるという貴重な経験をさせてもらいました」と話す。

同店では毎月新作スイーツを提供しており、併設のカフェメニューもあわせると、月に約10種類、年間100種類以上もの新作を考案しているというから驚く。思わず「大変ですね」と尋ねると、「大変なときもありますが、基本的には楽しんでいます」とにっこり。創作のエネルギーとアイデアはどこから湧いてくるのだろう。

店内奥にはカフェコーナーがあり、今さん自ら席までメニューを運ぶことも。

今さんによると、休みの日や出張の際はさまざまなお店を食べ歩き、SNSでアップされる世界中のスイーツのビジュアルや組み合わせも参考にしているそうだ。地元のシェフやパティシエらとの情報交換や交流も大切にしている。

例えば「カシオペイア」は、地元飲食店とのコラボ商品だ。音更町の「カシオペイアコーヒー店」で飲んだコーヒーのおいしさに惹かれた今さんが、「ケーキにコーヒー豆を使わせてもらえませんか」と直談判したことがきっかけになった。店主である西さんの好意で、店名をそのまま商品名に使わせてもらっている。今さんにとっては思い入れの深い一品だ。「より美味しいものを、と常に考えているんです。好みはどうしてもあるので、10人中8人が喜んでくれるものを目指したい。トライ&エラーの繰り返しですね」。定番商品についても、時代のトレンドにあわせて、オープン時から改良を重ねてきた。優しく親しみやすい笑顔の向こう側には、スイーツ作りに対する強い情熱がある。

現在はスタッフの指導にも力を注いでいる今さん。カフェメニューなど新作の開発も少しずつ任せるようにしている。教えることは今さん自身にも大きな刺激となっている。若手の指導者として、さらに自分をレベルアップさせていく必要性も感じているという。

写真のメニューはスタッフが考案。

そんな今さんにこれからの夢を聞いてみたところ、「今後もスタッフの成長の後押ししたいです。それとやっぱり、たくさんの人が笑顔になれるケーキを作り続けたいですね」と答えてくれた。家族の笑顔をきっかけにこの仕事を目指して以来、変わらない思いが根底にある。

昔から変わらず一番楽しいのは、スタッフが帰った後の厨房で一人試作をする時間。疲れを感じることもあるが、作っているとやっぱりわくわくしてくる。「苦しい、つらい、って思いながら作ったケーキと、楽しいって思いながら作ったケーキでは、絶対に味が違うと思うんです。だからぼくはいつも前向きな気持ちでケーキを作るようにしています」。

トテッポ工房で働き始めて12年目。不思議な巡り合わせで、オープン年は上の息子さんが生まれた年でもある。自身のキャリアアップと子どもの成長が重なっていく12年間でもあった。「ここまで来れたのは、全て嫁のおかげだと書いておいてください」といたずらっぽく笑った今さん。彼のスイーツへの情熱は、見守り支えてくれる家族があってこそなのだろう。

シマエナガ 610円
お客様の要望から誕生。「雪の妖精」と呼ばれるシマエナガにあわせて、冬季限定販売(12~3月頃)。ルビーチョコレートのガナッシュを土台にしたチーズムースの中には、ブルーベリージュレも。

カシオペイア 475円
音更町「カシオペイアコーヒー店」のコーヒー豆を使用。生地にコーヒーシロップをたっぷり染み込ませ、コーヒーバタークリームとチョコレートガナッシュをサンド。隠し味にはヘーゼルナッツ。

月替わりのパフェ
(写真/クリスマスパフェ 1,265円) ※カフェコーナーで提供
季節感や旬の食材が楽しめるパフェは、月替わりで2種類ほど登場する。「スタッフによる新作パフェもあります!」と今さん。

生デコレーションケーキ(5号)4,200円
※4号、6号、7号サイズもあり
■予約期間 12/11(日)まで
■受取期間 12/23(金)~25(日)
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Profile

今 稔郁さん
1987年生まれ。帯広市出身。帯広農業高校から帯広調理師専門学校に進学。卒業後十勝管内の菓子店やイタリアンレストランにて勤務。2010年の立ち上げ時より十勝トテッポ工房へ。 現在シェフパティシエを務める。小2、小6のお子さんと妻の4人暮らし。趣味はキャンプと登山。

十勝トテッポ工房
電話番号 0155-21-0101
住所 帯広市西6条南17丁目3-1
営業時間 10:00~18:00
定休日 不定休 ※12/29~31、1/2・3は17:00まで営業。1/1は休み。

※掲載内容は2022年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。