パティシェという生き方②――一糸と庭Cafe/堀 貴志さん

十勝で活躍する3人の菓子職人にインタビュー。
3人はなぜパティシェという道を選んだのか。そして菓子作りにかける思いとは――。

第2回は「一糸と庭Cafe」の堀 貴志さんにお話を伺った。

地域密着の、人が集う、あたたかな場所を目指して

小学生の頃からお菓子作りが好きな男子だったという。クラスメイトに手作りのお菓子を振る舞い、高校生になった頃には女子たちと手作りのお菓子を交換するようになった。高校は帯広工業高校で建築を学んだ。「ものづくりが好きで、何かを作り続けていたかったんです」と話すのはパティシエの堀さんだ。

現在は他にパティシエ2名と共にお菓子を作っている。カフェには料理担当のシェフもいるが、月ごとに変わるパスタメニュー考案は堀さんが行っているそうだ。

札幌の製菓専門学校に進学し、卒業後は札幌の菓子店を2軒ほど経験する。しかしそこで働く中で、自分のやりたかったことと菓子業界での働き方に齟齬が生まれ始めたという。菓子業界から離れるべく選んだのは札幌のイタリアンレストラン。初めこそデザートを担当していたが、次第に料理も学ぶように。するとそれがまた楽しくなり、5年在籍していた中で最後は料理長を任せてもらえるほどになった。仕事への向き合い方やお客さんに対する意識はここで培われたという。

「レストランでの接客は菓子店とはまるで違いますし、オーナーの常に新しいことにチャレンジする姿勢に刺激を受けました」。当時のオーナーのことは今も師と仰ぎ、現在の店舗にも遊びに来てくれるなど良い関係が続いているそうだ。

堀さんが結婚を機に十勝に戻ってきたのは2017年。初めは、当時のウラニワカフェで料理を提供するシェフとして。その後半年ほどで、一糸でパティシエとして活躍することとなる。地元である幕別で大好きなお菓子作りの腕を振るう姿に、同級生や昔馴染みの人たちからは「夢を叶えたんだね」と声をかけられることも少なくない。店のオーナーもシェフも地元出身のため、地元に恩返しがしたい、地域貢献型の店舗にしていきたいと全員が声を揃える。

今年夏に新築され、カフェと一緒になった店舗。イートインでは季節を感じる盛り付けでケーキを楽しめる。コーヒーも丁寧にハンドドリップ。

2016年の開店当初から意識してきたのは「地産地消」。地元のおいしいものを地元の人に食べてもらいたいという思いは、小麦や卵、乳製品に始まり、果物や野菜まで広がりを見せ、生み出されるメニューからも年々強くなっているように感じられる。取材している間もお客さんが途切れることなく訪れていた。聞こえてくるのは「散歩の途中に寄ったの」、「体調どう?」など、ご近所感あふれる会話。商品はもちろん、スタッフのことも「好き」と言って貰えるように、お客さんに愛される接客を心がけているという。

「今後はイベントや料理教室なども開催してみたい。そうして地元の人が集まる場所になれば」と、堀さんは意欲的に語ってくれた。「人と人とを、想いで紡ぐ、一本の糸になりますように」という思いで付けられた店名は、確かに縁の糸を紡いでいるのだ。

いちごショート 400円
十勝産素材にこだわった人気No.1の定番商品。スポンジも生クリームも軽く食べやすいため、食後にもペロリといける。

いちごタルト 550円
いちごはその時期に一番おいしいものを使用。アーモンドクリームには煮たいちごを混ぜ、チョコタルト生地にほんのり塩けを効かせている。

モンブラン 460円
茨城県笠間の和栗を使用。タルト生地やアーモンドクリームとの相性◎の人気No.2。

Profile

堀 貴志さん
幕別町出身。札幌の製菓専門学校を卒業ののち、札幌の菓子店に就職。その後札幌のイタリアンレストランに勤め、料理を学ぶ。2017年、十勝にUターンし現在の会社のuraniwa cafe(当時)にシェフとして在籍。同年パティシエとして一糸に移籍。

一糸と庭 cafe
電話番号 0155-66-7290
住所 幕別町札内中央町528-12 
営業時間 10:00~18:00 ※12/31は15:00まで
定休日 木曜(祝日の場合営業) ※12/29は営業

※掲載内容は2022年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。