【かなごんの甘いものにっき】No.48 Mélanger Labo.のフィナンシェドーナッツ

おやつはココロとカラダの栄養補給。1日2食だった江戸時代、八つ刻(今でいう午後2~4時の間)に休憩を兼ねて軽食代わりに食べていたものを「御八つ」と呼んでいたそうな。だがしかし、現代に生きる我々にとって「おやつ」は八つ刻に限らず、好きに食べられるのだからこの上なくありがたい時代に生まれたものだ。好きな時に好きなものを、好きに食べる贅沢を噛み締めて。本日もおやつをいただこうと思う。

左手前がプレーンの「フィナンシェドーナッツ」(320円)、右手前が期間限定「桜」(380円)、左奥が「ホワイトチョコ」(350円)、右奥が「チョコ」(350円)だ。

ドーナッツといえば某お笑い芸人の「ゼロカロリー!」でも有名なおやつである。起源はオランダの揚げ菓子であるとされているが、昨今その姿は揚げ菓子に限らず、焼き菓子としても多様に登場している。だがしかし、「フィナンシェドーナッツ」というジャンルに聞き覚えがあるかといわれたら、正直初耳であった。「Mélanger Labo.」の代表を務める三浦啓太郎さんも「北海道では初ではないでしょうか」と得意げな笑顔を見せた。

テイクアウト窓口の横で。右が三浦さんで、左がスタッフののどかさんだ。

「Mélanger Labo.」は2024年3月25日に、芽室町役場の西向かいにオープンしたテイクアウト専門のスイーツショップだ。店名の「Mélanger」はフランス語で「混ぜる」という意味。フィナンシェドーナッツの監修を務めた同町のイタリアン&フレンチのお店「calme’n(カルム)」の杉本シェフが命名した。「お店のコンセプトが、芽室町が誇る農産物などを使ったコラボスイーツを提供することなんです。食材とつながる、そして人と人がつながっていくことを店名に託しています」と話す三浦さん。三浦さんは同町で長く続く金物屋「三浦商店」の4代目。商店の経営者の他、ドローンパイロットかつ自身が開校するドローンスクールの講師の顔も持つ、芽室町きっての話題の人物だ。

杉本シェフ監修のフィナンシェ生地を丁寧に焼き上げる。こんがり焼き立てのドーナッツからはバターの香りが立ち上るようだ。

異業種ともいえるスイーツショップの経営をスタートさせたのはなぜ、と尋ねると「もともとスイーツショップを開店する予定ではなかったんです」と驚きの一言。メランジェラボのある場所は、以前は三浦商店の家具販売がされていたところだった。家具販売をやめた時から長らく倉庫として使われていた場所を、町の助成金を使い「地域の交流の場所になるよう、シェアキッチンにしようと思って整備していたんです」。そんな時、芽室町で落花生を栽培・販売しブランド化している「MEMURO PEANUTS」の代表の藤井さんから「メムロピーナッツを使ったスイーツショップがやりたいんだけど」と相談を受けた。何かに挑戦している人は、また別の挑戦をしている人とつながっていく。これがMélanger Labo誕生の瞬間だった。

丁寧に袋詰されるドーナッツたち。現在1日の販売数はおよそ200~300個だという。

最初に取り組むスイーツとしてドーナッツを提唱したのは三浦さん自身だ。「子どもから大人まで食べやすく好まれるスイーツとしてぴったりかと。ヘルシーさが欲しかったので“揚げない”ドーナッツにしようと思いました。結果的にはフィナンシェになったことで、揚げるよりカロリー高めになっちゃいましたけど。」と苦笑い。作るスイーツが決まればと、以前より知り合いだった杉本シェフに早速相談。もともとお店で出していたフィナンシェのレシピを改良し、アーモンドパウダーを使用する一般的なフィナンシェとは異なる、ピーナッツパウダーを使用する生地を開発した。この生地をドーナッツの型に流し込み焼き上げた後、バターを馴染ませしっとりさせるために1日寝かせる。そうしてフィナンシェドーナッツは完成し、お客さんの元に届けられる。

さて、フィナンシェドーナッツ誕生の経緯を綴ったところでようやく実食である。バターたっぷりのフィナンシェはコーヒー好きの私としても好きな焼き菓子だが、ドーナッツ型になっているのは初めてだ。1個のサイズ感は手のひらくらいだが、しっとり詰まったフィナンシェ生地ならではの重みを感じる。

まずはじめに食べるのはプレーンだ。おいしそうと思わざるを得ないこんがりと焼かれたきつね色。バターの香りが豊かで思わずジュルリとよだれが垂れそうになる。かぶりつくとはじめに感じるのは、カリッと香ばしい外側と、しっとり包みこまれるような内側の食感のWパンチ。と思ったら舌の上で弾けるように濃厚なバターとピーナッツの風味がガツンとくる。ああ、これはおいしい。

そもそも食感に差異があるスイーツが好きな私だが、このカリッとしっとりがドーナッツの形によって表面積が広がることで通常の長方形のタイプよりもたくさん楽しめるところがいい。さらに香ばしいピーナッツの風味が、今までに食べたことのないフィナンシェとして格を上げている。そして極めつけは、濃厚ながらもしつこくない味のバランス。バターが濃厚すぎて1個食べればもう満足なフィナンシェも多い中、意外にもさっぱりと食べられる。杉本シェフの技の効いた調合が、このような逸品に仕上げているのかと感服しきりだ。

チョコやホワイトチョコは、チョコレートでコーティングするために、プレーンよりも甘さや風味を調整した生地を使用。クラッシュしたメムロピーナッツを散らしたチョコも、カラフルな見た目でかわいらしいホワイトチョコも悩んだ末にどちらも購入する人の多いことだろう。

GW頃までの販売を予定している期間限定商品の「桜」は数量限定品だ。かわいらしい見た目と本格的な桜の風味。桜スイーツ好きはたまらないだろう。

レギュラー商品の他、期間限定商品にもチャレンジ。春は春らしく桜の味が新登場している。ホワイトチョコに桜パウダーを混ぜ込んだ愛らしいピンク色のチョコレートでコーティング。より桜の風味をもたらすべく、桜の花の塩漬けを一つひとつ丁寧に、手作業で広げてトッピングしている。バターの芳醇なフィナンシェ生地に、ほんのりとした塩気。これによって生地をより濃厚に感じることができるのもポイントだ。

現在は次なる農産物とのコラボ、芽室町にある鈴鹿農園のさつまいもを使ったドーナッツを開発中だとか。形になって私の手元に届くのが今から楽しみだ。

Mélanger Labo
(メランジェラボ)
電話番号 080-8741-5714
住所 北海道河西郡芽室町東1条2丁目7-2 
営業時間 11:00 ~14:00(品切れ次第終了)      
定休日 日~火曜 
Instagram https://www.instagram.com/melangerlabo