食べると思い出す景色がある。匂いをかぐとこみ上げる思い出がある。遠く離れていても故郷の思い出は懐かしい味とともにある。ソウルフードとは、心に刻まれた思い入れのある料理をいう。十勝に住むわたしたちのソウルフードとは何だろう。これらを食べて育ってきた。きっとこれからも味わってゆくのだろう。名前を聞いただけで、その味が思い出されるほどに。十勝のDNAとして刻まれた、ソウルフードに迫る。
これを食べればいつも笑顔に。
人々の心に残る、唯一無二のカレーライス。
帯広と釧路に12店舗を構えるカレーショップインデアン。経営するのは1899年創業の藤森商会だ。インデアン開店のきっかけは創業から60年ほど経った頃。帯広駅前でふじもりを営んでいた当時、藤森商会は新たな事業展開を求められていた。専門店の開店を模索する中、三代目・藤森照雄さんが選んだのがカレーだったという。それから2年ほどの準備期間を挟み、1968年12月待望のインデアン1号店をオープンさせた。「子どもにもお年寄りにも好まれ、毎日食べても飽きない味」をコンセプトにスタートしたインデアン。どの年代にも食べやすいようにと、開店当初の値段は100円だった。その手ごろな価格と味のおいしさ、照雄氏が手掛けたハイカラな内装も大きな評判を呼び、1号店は約6、7坪の店内ながら一日に1︐000人もの客が並んだという。やがて客の声に応えルーのお持ち帰りも始まり、インデアンは家庭の味としても浸透していく。鍋を片手にルーを持ち帰る光景は、今や十勝を代表する光景の一つだ。
親から子へ、子から孫へと伝わってきたインデアンの味。幼少の頃から慣れ親しんだ味を求め、年末年始やお盆時期には帰省客らの長い行列ができる。どこか懐かしく、十勝民の第2の家庭の味となったインデアンは、今日も多くの人のお腹を満たしている。
開店からおよそ半世紀。
インデアンのこれまでとこれから
なぜインデアンは十勝のカレーを代表する名店へと成長したのか。脈々と受け継いできたこだわりと気になる今後について、藤森商会五代目・藤森康容さんにお話を伺った。
地域と共に歩んできた。これからも寄り添い、恩返しを
藤森: 現在年間200万から220万食を販売しています。コロナ禍の時は一時期落ち込みましたが、最近は徐々に回復傾向にあります。緊急事態宣言中は「お店では食べられないけどお持ち帰りしたよ」と言ってくださる方もいて、本当にありがたかったです。
藤森:真偽は定かではありませんが、専門店を開くにあたり、カレーか天丼のどちらかにしようとしていたと聞いたことがあります。どちらも当時ふじもりで人気のメニューだったようです。
藤森: 全体で4割ほどいらっしゃいます。藤森商会では企業方針として「2番目においしいお店」を掲げています。1番目においしいのは、自分や親、パートナーの方が作るそれぞれの家庭の味。ただ毎日作るのはちょっと大変。今日は料理をお休みしたいなという時に選んでいただけるお店であればと思います。
藤森:意識しているのは家族で食べられる味。お子様からご高齢の方まで、どなたが食べてもおいしいように味の設計をしています。実は時代に合わせて味は徐々に変えていて、三代目の祖父も「もっとおいしくできる」と毎日味を研究していました。現在もおいしい味を日々追求しています。
藤森:地域の人に寄り添うことを意識しています。インデアンでは学校祭や地域のイベントの出前にもよく利用していただいています。そのような場面で食べてもらえることが思い出の味に繋がっているのではないかと思います。学校祭で子ども達に食べていただけるのが一番嬉しいですね。
藤森:どの年代の人でも食べやすい価格設定を目指しています。インデアンのご飯は普通盛りで280g。通常のインデアンカレーでもお腹いっぱいにならなければ駄目だ、という先々代の祖父の思いを今も引き継いでいます。
藤森:エビカツ中辛ホットオイルちょいがけが好きです。ルーは圧倒的にベーシックルー派。あっさりとしていて食べやすく、カツと一緒に食べるならベーシックが一番良いですね。また、ベーシックは祖父と最も力を入れて研究したルーでもあります。トッピングと合わせた時に一番おいしいルーになるように、バランスを調整する難しさがありました。実はインデアンではベーシックルーのことを「ネギ」と呼んでいます。お店に行ったらぜひ耳を澄ましてみてください!
藤森:地域に育ててもらった会社なので、地域に恩返ししていきたいという思いがあります。十勝から巣立っていった方々から、遠くへ行ってもインデアンを食べたいという声をいただくこともあり、そのためにはどうしたら良いのかなと思う時があります。地域や社員のために、何よりお客様に一番喜んでいただける方法を普段から考えています。
株式会社 藤森商会
電話番号 0155-65-4884
住所 帯広市西7条南9-70