【わざわざ買いに行きたいパン③】ごりらのしっぽ

例えば100キロ離れていても、例えば片道1時間かかっても、食べたくて食べたくて買いに行ってしまうパン。時間も距離も飛び越えて、心を掴んで離さない魅惑のパンのひみつに迫る。第3回目は、新得町の「ごりらのしっぽ」を訪ねた。

噛みしめるほどあふれ出す旨みに惚れ込むパン

ごりらのしっぽのパン、通称ごりぱん。それを初めて食べた時、衝撃を受けた。重い、そしてとにかく硬い。通常のパンでは考えられないほどの咀嚼数で食べ切った。今までに食べたことがないパンだと素直に感じ、これは癖になると新たな出会いに感謝した。

お店の前でワイルドに決める岡田さん。お店は自分の手でDIY。扉を開けた瞬間、石窯の薪の焼けるスモーキーな香りがブワッと広がる。

噛みしめれば噛みしめるほど旨みが口に広がる。イカやタコ、もしくは肉に使うような表現がぴったりのパンを生み出したのは、岡田元成さんだ。東京でITの仕事をしていた岡田さんが新得町にやってきたのは2002年のこと。

なぜ新得町に、と尋ねると「隣の土地が空いているから来ないか?」と小学生時代(当時埼玉県)の同級生が誘ってきたことがきっかけだったという。「いつもは慎重派のカミさんも、その時はいいんじゃないってすんなり。」運命的なものを感じたのかと再度尋ねると「誠意のある誘いは断らないようにしてるよ」とさらり。

岡田さんが大切にしている人との縁は、パン屋をはじめたことにも起因している。奥さんがパン好きということで始めたパン作り。当初は電気オーブンで焼いていたが段々と物足りなくなり、石窯で焼くようになる頃には、知り合いに「毎週家に持ってきてほしい」と頼まれる出来栄えとなっていた。そこで予約をとってパンを作っていたら「知り合いのばあちゃんに、お店開かなきゃゃダメよって言われてね。」そうしてごりらのしっぽが誕生した。

人との繋がりの中で生きる岡田さんが、どうやらパンとも同じように付き合っているようだと思ったのは酵母の話を聞いた時だ。「酵母の中には見えない何かがいてさ。水や温度をそいつらが安心して過ごせるように整えてあげるんだ。」

果物や野菜から起こした自家製酵母を大事に繋ぎながら使っている岡田さんの、誠意ある姿勢。ごりぱんを形作るのは、岡田さんの誠意そのものだ。

硬いごりぱんの中にはさまざまなものがつまっている。小麦と酵母の旨み。岡田さんの誠意。そしてごりぱんを食べ続けるファンの想い。今日もじっくり噛み締めて、「いただきます。」

ごりぱんには白と黒がある。白が小麦100%、黒がライ麦20%配合。それぞれの粉に合うよう練り込まれる素材もさまざまだ。

長いパン(白)350円
岡田さんが個人的に一番好きなパン。みっちりと中身の詰まったフランスパンは薄めに切り、チーズをのせて焼くのがおすすめ。

山型(黒)420円
小ぶりなサイズに騙されることなかれ。重量級の重みと密度に驚くはず。ライ麦が20%配合された独特の香ばしさがGOOD。

くるみレーズン(白)350円
石窯で火を通すため膨らむレーズンが、まるで黒豆みたいと言われるそう。もっちり力強い生地にクルミとレーズンがたっぷり。

いちじく(黒)350円
お客さんの声で生まれた一品は、甘くねっとりしたいちじくとライ麦配合の生地が相性抜群。いちじく好きにはたまらない逸品。

しっぽ くるみ(黒)180円
店名由来のしっぽの形に惹かれる一品。むっちりとした食感とほのかに香る酵母。ごりぱん初心者はまずはここから食べてみて。

ごりらのしっぽ
電話番号 0156-65-3678
住所 新得町上佐幌基線82-26
営業時間 金・土・日曜 10:00~17:00(売り切れ次第終了)

※祝日の営業はHPをご確認ください。

※掲載内容は2022年8月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。