おいしいお肉を食べてほしい。
この十勝で育まれる家畜たちと、育てる人の想い。それぞれと真摯に向き合って、良質な肉を追求し続けています。特別なこだわりを持って仕事をしている生産者に、おいしいワケを聞いてみました。
新たに生まれ変わった 新得地鶏
わずかな酸味により、すっきりと澄んだ後味
地鶏の定義は、古来より日本にいたといわれる品種、または明治時代までに日本人が外来種と掛け合わせて作り出した鶏(日本鶏)とされています。当時、北海道で初めての地鶏を開発すべく、方向性が定められました。明治年間までに定着した38種の在来種から、平飼いに適し、北海道の寒さにも耐えられる環境適応性、さらには従来のブロイラーと差別化すべく、歯ごたえの良さやモモ肉に脂がのることを重視したといいます。
1995年、卵の数が取れるロードアイランドレッド、卵も種付けもしやすい名古屋コーチン、肉質の良いシャモを交配し、新得地鶏の源流である「北海地鶏」が開発されました。その後、畜産試験場が小柄で育成日数がかかる北海地鶏の問題を低減しようと開発を重ね、2006年には「北海地鶏Ⅱ」を開発。当時の新得には食肉養鶏の業者がいませんでしたが、町は北海地鶏Ⅱを活用した特産品開発や販路開拓に動き出します。そんな中、町内最初の食肉養鶏に挑戦したのが、現在の生産者である十勝・新得フレッシュ地鶏事業協同組合の代表、武田さんでした。 今の新得地鶏である「北海地鶏Ⅲ 」が開発されたのは2019年。産卵率を高め、取れる肉の量を多くするため、個体が大きくなるよう改良されました。
飼育の特徴としては、地鶏は1平方メートルあたり10羽以内の飼育とされていますが、新得地鶏はたったの3羽。肉質を良くするためにはストレスをかけず、のびのび育てることが一番だといいます。平飼いする床の敷料には新得のそば殻を混ぜることで消臭効果を発揮し、鶏のストレスを軽減。飼育期間も長く、ブロイラーは約50日、地鶏でも75日以上ですが、一般的な新得地鶏は理想の味わいとなる120日をかけて飼育しています。餌は地鶏の開発段階から考慮してきたもので、特別なものを与えなくても個体の歩留まりや食味、歯ごたえが出るように計算された飼料なのだそう。他にもすべてのひな鳥一羽ずつにワクチンを接種することや、鶏同士がつつき合って傷つけ合わないようにするため、生まれて10日後にはくちばしの先を、とがらないように処理をするなど手間暇かけ育てています。
新得地鶏の味の良さが最大限に発揮されるのは炭火焼きだといいます。「肉のうまみは1・5倍、歯ごたえは2・5倍」と表現されるほど。武田さんは「噛むほど肉の味わいが出て、食べ終わっても臭みがない。在来種の特徴が際立って出ている」と語ります。さらなるおいしさを求めて、改良は今も進められています。
十勝・新得フレッシュ地鶏事業協同組合
電話番号 0156-69-5511
住所 新得町1条北1
丸勝の十勝ロイヤルマンガリッツァ豚
世界一の豚を目指して
食べられる国宝に認定される十勝ロイヤルマンガリッツァ豚商品
シャンボンブラン
肉の内モモと外モモを合わせた風味豊かな一品。しっとりやわらかい筋や赤身肉は、噛むほど旨みが広がります。
ソプレザータ
頭肉と豚足の煮凝りソーセージ。軟骨のコリコリとした食感と皮までおいしく食べられるところがポイントです。
モルタデッラ
粗挽き肉にスパイスやピスタチオを加え、腸詰めに。赤身肉をふんだんに使用。豊かな香りや味わいが特徴です。
ここ2~3年で、テレビなどのメディアからも注目を浴びている「十勝ロイヤルマンガリッツァ豚」。マンガリッツァ豚はハンガリーが原産国の豚です。ボリュームのある巻き毛で覆われている見た目が特徴的で、極寒の中でも過ごすことができます。ハンガリーでは「食べられる国宝」と認定される希少な豚。十勝ロイヤルマンガリッツァファームではマンガリッツァ豚を伝統的な方法で肥育し、ここでしか食べられないお肉を目指していることから、十勝ロイヤルマンガリッツァ豚と名付けています。
誕生のきっかけは、ファームの運営会社となる丸勝の梶原一生さんがさまざまな種類のお肉を食べ比べたこと。群を抜いておいしいと感じた肉がマンガリッツァ豚でした。目隠しをすれば豚肉だと気づけないのではないかと思ったほど、新感覚の味わいに衝撃を受けたそう。極めれば、牛・鶏・豚・マンガリッツァ豚というような、肉の種類に新ジャンルができるほどの個性を見出せると考えた梶原さん。十勝とハンガリーの気候が似ていることにも運命を感じ、十勝でマンガリッツァ豚を育てることを決めました。
ファームでは、純血のマンガリッツァ豚を、約14ヵ月もの時間をかけて飼育しています。初めは25頭の子豚を十勝ヒルズで育て、自然放牧によるストレスフリーな環境、動物性の単味飼料や添加剤を一切使用しない北海道産中心の飼料を徹底的に守りました。現在では拠点を26万5︐000平方メートルの傾斜のある土地に移し、広々と走り回れる環境を実現。いきいきとした健康的な豚を、繁殖豚と肥育豚合わせて700頭以上を育てています。2022年11月には純血マンガリッツァ豚の維持管理を目的とした登録機関「MBOAR」に登録しました。
肉の味わいもここ数年で広く認知された十勝ロイヤルマンガリッツァ豚。たっぷりと厚みのある脂は、人間の体温で溶けるほど融点が低いのでスッキリとした味わい。クセがなく、甘みが濃いといわれています。「うちが育てた豚を、世界一の豚にしたい」。十勝の人々にはもちろん、世界中に十勝ロイヤルマンガリッツァ豚を広めていきたいと梶原さん。スタッフは毎日のように肉を試食し、環境による微妙な味の変化の謎を解き明かすべく、日々研究を続けています。
株式会社 丸勝
電話番号 0155-37-4211
住所 帯広市西25南1-1
【卸店舗】
・マリヨンヌ
・ガーデンカフェ NIWAKARA(十勝ヒルズ内)
【ネット通販】
・十勝ロイヤルマンガリッツァオンラインショップ
鈴木牧場のグラスフェッドビーフ
オーガニックを通じて食卓を豊かにしたい
牛肉本来の旨みが味わえるグラスフェッドビーフ商品
オーガニックグラスフェッドビーフヒレステーキ
グラスフェッドビーフは赤身が多く、穀物で育った牛と比べて低脂肪、ヘルシー。ヒレはやわらかく脂の濃厚な旨みがあります。
オーガニックグラスフェッドビーフサーロインステーキ
グラフフェッドビーフのサーロインは、やわらかく甘みがあり、ジューシーさを感じられる部位です。牛肉本来の味わいが楽しめます。
オーガニックグラスフェッドビーフハンバーグ
原材料は牛肉とタマネギ、塩麹、黒コショウの4つだけ。粘り気があり、赤身のおいしさがストレートに伝わってくるハンバーグです。
鈴木牧場の4代目となる鈴木敏文さん。2005年に牧場を継ぎましたが、その3年後に家畜伝染病で多くの牛が命を落とす、という経験をします。以来、牛の健康を第一に考える経営を考えるようになったそうです。ヒントになったのは野生の鹿。「彼らは山の草木しか食べないのに、毛艶は美しく、筋肉も脂肪もしっかりとついているんですよね」。野生動物のように自然に近い環境で飼育をすれば健康な牛に育てられるはず、と考えたのです。
まずは食べ物が大事、と考えた鈴木さんは、牛が日頃食べている牧草を自ら口にしてみます。すると、ひどいえぐみと苦みがあり、まずさに驚かされました。一方で、自然に生えているイネ科の牧草を食べてみると、ほんのり甘みがある。この差は何だろうと考えた末、鈴木さんは堆肥を牧草地に還元し、無農薬・化学肥料不使用で牧草を育てることを決心します。 3年かけて、発酵型の堆肥と尿を畑に還元し続け、循環型酪農に取り組んだ結果、キラキラとした甘い牧草に変わり、その牧草をむしゃむしゃと食べる牛たちの毛艶や目の輝きも変わってきました。実はもともと牛乳が好きではなかった鈴木さんですが、ある日バルククーラーから搾りたての牛乳を飲んでみたら、「ものすごくおいしかったんです」とのこと。牛が健康になることで、乳の味も大きく変化したのです。
もともとは乳牛メインだった鈴木牧場ですが、3年前から肉牛も始め、現在肉用牛は10頭ほど。オーガニックの牧草や野草だけで育った肉は、牛乳がおいしいのと同様、肉本来の味わいがあります。「まずは味付けしないでそのまま食べてほしいです」と鈴木さん。穀物で育った牛と比べると低脂肪でヘルシーという特徴もあります。
2020年には牧草地の有機認証、2021年には生乳、牛肉、鶏卵のJASオーガニック(有機)認証も取得した鈴木牧場ですが、当初「化学肥料、農薬を使わない」という方針を打ち出したとき、鈴木さんのお父さんは大反対したそうです。生産量を減らさない、等の約束をした上で取り組み、3年後には無事達成しますが、一番伝えたかったお父さんは既に亡くなっていました。「人にも環境にもよいものを生産し続けることは、父との約束だと思っているんです」。父への思い、そして牛や環境への情熱。鈴木さんの心が込もった鈴木牧場の牛肉をぜひ一度味わってみてください。
鈴木牧場
電話番号 090-5075-5586
住所 広尾町紋別16線14-5
※牛肉は4/1より販売
【卸店舗】
・SLOW living
・熊田商店
【ネット通販】
・北海道スロウなお買い物
・ツクツク!!!鈴木牧場