「何故」と気になるラーメンがあった。
一人は十勝最北端という場所で。
一人は遠き名古屋のご当地グルメを。
一人は老舗のそば屋で。
三者三様のラーメンづくりを追った。
十勝になかった台湾まぜそば専門店の登場
台湾まぜそばとは、名古屋めしで有名な「台湾ラーメン」より発展した汁なし麺である。台湾ミンチ(辛く味付けした挽き肉)を極太麺にのせ、ニラ、ネギ、魚粉、卵黄、おろしニンニクなどをのせ、かき混ぜて食べるのが一般的だ。名古屋のローカルめし専門店が、なぜ帯広に。話を聞くと、ひとえに「台湾まぜそば愛」が高じたが故の新しい挑戦の形だった。
十勝で農産物の卸売などを行う会社を経営していた佐藤貴俊さんは、新型コロナウイルスの流行で売上が減少する中、何か新しい事業を始めなければと考えていた。さまざまな選択肢がある中で、この十勝に自分にとって足りないものがあることに思い当たった。それが台湾まぜそばだ。「東京で音楽関係の会社もやっていて、1ヵ月の間で何日も関東にいることがありまして。一時都内で台湾まぜそばが大流行した時に、こんな旨いものがあるのかとハマって。週3~4回は食べていました」。しかし十勝に戻ってくると、台湾まぜそばはどこにも見当たらない。時折期間限定のメニューで見つけても、自分の食べたい味ではなかった。ならば、自分でつくればいいのではないか。調べてみると北海道にはまだ有名なチェーン店もなく、チャンスがあると踏んだ佐藤さん。台湾まぜそば愛に突き動かされ、2022年7月、台湾まぜそば専門店たか家をオープンさせた。
オープンまでは発祥の地、名古屋にも赴き食べ歩きを続けた。店舗が決まり試作環境が整うと、店長の中村さんと二人、2週間ほど籠もりきって店の味をつくり上げた。「今でも味は毎日アップデートしています。ありがたいことにリピーターも増え、直接感想をいただく機会も増えました」。帰りがけに「今日ちょっとしょっぱかったね」といわれると、その晩には味を調整。そんな日々を繰り返し、「オープンの時とはまた味が違っていると思います。もちろんいい意味で」と佐藤さんは話す。進化を続ける台湾まぜそば。この年末からは塩ベースの味も登場予定だそうだ。
「台湾まぜそば」というブランドを背負う
十勝では他にない専門店。たか家で人生初めての台湾まぜそばを食べる人もいることだろう。それはつまり「台湾まぜそば」というブランドを背負うことでもある。例えば台湾まぜそばには「追い飯」という文化がある。麺を食べきった後、残ったタレに白飯を入れ、タレまできれいに食べる。この追い飯までを計算して作るため、総じて味が濃い目なのだ。たか家では食べ方から丁寧に解説し、台湾まぜそばへの理解を広めている。「管外で食べた時、たか家の方がおいしいと思ってもらえるものを提供していきたい」。佐藤さんに課せられた使命は、十勝に台湾まぜそばを広め、その上で「たか家が一番おいしい」と思ってもらうこと。ブランドを背負うとは、きっとそういうことなのだ。
決して万人受けする味ではないと佐藤さんは語る。「老若男女に受けるのではなく、その味が大好きな人に食べに来てもらえれば」。今まで十勝になかった台湾まぜそばという新しい味。この味に魅せられ、足繁く通う人の流れはもうすでに生まれている。
台湾まぜそば専門店
たか屋
電話番号 0156-40-7453
住所 帯広市西20南5-36-22
営業時間 11:00~14:00(L.O.15分前)、18:00~20:30
定休日 水曜 ※12/30~1/4は休み